

2011年3月11日に発生した東日本大震災は、多くの方の尊い命と社会基盤を一瞬にして奪い去りました。東洋ゴムグループの社員、またそのご家族にも亡くなられた方がいらっしゃいます。お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、今後の復興に向けて、全力を尽くしてまいります。当社グループでも、主力タイヤ工場である仙台工場を含む3つの生産拠点が被災しました。建屋、施設に大きな被害はありませんでしたが、停電などもあり一時操業を停止しました。日本中が混乱を極めるなか、私たち企業の役割は、工場を早く再稼働させ、地域に活気を与え、従業員の生活不安を和らげることだと強く実感をしました。事業活動を継続していくことこそが地域社会とともに復興の道を歩むことだという思いで現在も取り組んでおります。
私たちは常に、日々の仕事で創意工夫、改良改善を積み重ねています。そこから付加価値のある製品を創造、供給することにより、私たちの企業が社会に対して役立つ存在となるように努めています。一方、そうした企業活動によって得た利益を、さまざまなカタチに配分し、還元しています。企業が納税することにより、行政がそれらを社会に還元してくれています。また、利益は従業員の生活を守る源泉であり、給与・報酬というカタチでそれを保障していますし、株主の支持に対して配当というカタチで報いています。さらに、投資を行うことで事業を発展させ、雇用を維持拡大しています。私は、実は一見、当たり前のように思えるこれらのことが本来のCSR、企業として求められる社会的責任であると考えています。ところが今、企業が果たすべき社会的責任は大きく変化してきました。「企業のグローバル化」とともに、「環境破壊の深刻化」が軌道を一にして猛スピードで進んでいます。企業活動、つまり経済活動は国境を越えて膨張し、「社会環境の変化」に大きな影響を与えるとともに、「社会環境の連鎖」に大きな影響を受ける構図になっています。
しかし、世界を見渡すと、国の行政機能はその国単位以上にはなかなか影響を及ぼしてはいません。経済が政治に先行してグローバル化しているのです。経済活動の暴走を慎み、環境負荷を減らさなければ、持続可能な発展は望めません。こうした前提に立ってみたとき、世界的な次元で対峙すべき社会的課題に対し、今、グローバルに経済活動を行っている単位である私たち企業自らが「自制心」を持ち、正しく自発的に行動していかなければならないのだと強く思います。したがって、企業イメージの向上を図るという趣旨を含んだ、いわゆるフィランソロピー(慈善活動)やメセナ(文化・芸術活動の支援)のような取り組みは、企業が果たすべき社会的責任とは分けて考えなければなりません。
また一方、企業不祥事の多発をきっかけにその重要性が叫ばれるようになったコンプライアンスやガバナンスは、営利活動を行ううえでの規範、仕組みであり、それに則った企業運営のあり方です。いつも私は当社の幹部研修の際に例示しますが、法の範囲を守ること、いわゆる遵法は当たり前のことです。ルールによって、行動を律するのは規範を守ろうとする企業倫理の次元です。これらよりも、個々人の持つモラルやマナーによって社会が正しく成り立つ姿、これが最も高貴な社会のあり方であり、企業市民として私たちが率先してそういう社会を創っていかなければならないと思っています。つまり、CSRは「自発的な正しい行動」に裏付けられて、社会に還元される企業活動であると私は考えています。ですから、見返りを求めたり、何かを利するための行動とは異なるのです。
当社は創業から間もないころ、「昨日より今日は より良くより安く需要者の為に各自の職場で最善を」という言葉を社是として掲げました。常にお客さまに“想い”を馳せ、仲間とともに創意工夫を重ね、喜んでいただける良い製品を生み出し、求めてくれる人びとに満足していただけるよう最善の努力を尽くす。この創業の精神は、私たち東洋ゴムグループの歴史に脈々と流れる「会社の信念」です。東洋ゴム工業は、規模は大きくはないが、そこに集う一人ひとりが正しく一生懸命、仕事をする集団であろうと私は社員に語りかけています。そして、その一つひとつの仕事の結果が利益として計上でき、私たちの社会的業績、存在価値として社会に還元できるのだと考えています。
また同時に、そうあることで頑張った仲間たちと称え合い、その家族とともに喜びを分かち合えるものと考えています。また、事業をさせていただいている地域社会は一番身近なコミュニティです。私たちはお客さまもさることながら、地域とともに歩む姿勢を地道に積み重ねていきたいと思います。社員が自ら自分の仕事に誇りを持って正しく一生懸命取り組み、そこに知恵や思いが生まれ、グローバルにお客さまや地域の方々に喜んでいただくことができる。社員の自発的な行動がこの会社のカタチをつくり、社会における信頼を築いていく。これこそは私たち東洋ゴムグループのCSRの原点だと思っています。